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2023年4月6日 · 読了時間:6 分
飲食店の開業には、まとまった資金が必要です。そこで、あらかじめかかる金額の目安や、資金調達方法を確認しておかなければなりません。
この記事では、飲食店の開業に必要な資金の調達方法や、開業資金を抑えるコツを解説します。
飲食店の開業には、資金が必要です。開業資金を調達するには自己資金で賄う方法と、外部から資金を集める方法があります。
外部から資金を集める方法は、主に以下の4つです。
金融機関の融資で開業資金を調達する
補助金や助成金を利用して調達する
クラウドファンディングで開業資金を調達する
親戚・知人から開業資金を調達する
それぞれの概要や、メリットとデメリットを確認していきましょう。
金融機関に借入を申し込むと、開業資金を調達できます。新たな事業をはじめる際に受ける融資のことを創業融資と呼びます。
創業融資を受ける場合、日本政策金融公庫に申し込むか、民間の銀行経由で各自治体が窓口である制度の融資を利用することが一般的です。今回は、主に日本政策金融公庫で融資を受ける場合のメリットとデメリット、方法を解説します。
日本政策金融公庫で融資を受ける場合、実績がなくて開業する場合でも、比較的審査が通りやすい点がメリットです。また、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」を利用すれば、原則として無担保無証人で借り入れできます。
融資限度額が3,000万円(うち運転資金1,500万円)であるため、余裕を持った資金調達ができるでしょう。
日本政策金融公庫で融資を受ける場合、制度融資を利用する場合と比べて金利が高いことがある点がデメリットです。ただし、制度融資を利用せずに民間金融機関から融資を受ける場合と比べると、一般的に金利は低い傾向にあります。
創業計画書の提出など、手間がかかる点もデメリットです。また新たに開業する場合や開業後まもない場合は、調達する資金の10分の1以上の自己資金を用意しておかなければなりません。
日本政策金融公庫で融資を受ける場合、以下の流れで進めていきます。
(電話や窓口面談で融資について相談)
インターネットで申し込み
書類を持参して面談
融資が決定すると、契約手続き
融資金入金、返済開始
インターネットで申し込む際には、一般的に電子データで以下の書類を準備しなければなりません。
創業計画書
見積書(設備資金申し込みの場合)
履歴事項全部証明書または登記簿謄本(法人の場合)
運転免許証またはパスポートの写し
飲食店営業に関する許認可証の写し
なお、申し込みの窓口は、開業予定場所近くの日本政策金融公庫支店になることが一般的です。
国や地方公共団体から支給される補助金や助成金を利用して、開業資金の調達もできます。両者に明確な区別があるわけではないですが、補助金は採択件数や金額に限りがあるのに対し、助成金は要件を満たせば誰でも受給できるものであることが一般的です。
そのため、助成金のほうが補助金よりも受けやすい傾向にあります。補助金や助成金を利用するメリットやデメリット、方法を確認していきましょう。
補助金や助成金は借入ではないため、返済が不要で利息の支払いも発生しない点がメリットです。開業してすぐに利益を出せるとは限らないため、返済の負担がない点は助けになります。
また補助金を受給できると、社会的信用が高まる点もメリットです。国や地方自治体から認められたことになるため、今後民間の金融機関に運転資金を申し込む際にアピールできます。
要件を満たさなければ受け取れない点が、補助金や助成金を利用する際のデメリットです。また、補助金の場合は採択件数や金額が決まっているため、審査を通過しなければなりません。
また、いくつもの書類を作成して提出しなければならない点もデメリットです。開業前後の忙しい中、書類作成に時間がかかります。
さらに、一般的に補助金の入金が後払いである点がデメリットです。先に自分で支出し、後から入金となるため、あらかじめ手元に資金を用意しておかなければなりません。
東京都と東京都中小企業振興公社では、創業助成事業(助成限度額300万円)を実施しています。2023年度において東京都の創業助成事業を利用する際の流れは以下のとおりです。
事前に定められた創業支援事業を利用して要件を満たす
申請書提出
書類審査・面接審査
交付決定
事業実施
完了報告
助成金交付
東京都以外にも、さまざまな自治体で補助金や助成金事業を実施しており、それぞれ実施時期や要件が異なります。自社(自店)が要件を満たす制度を探し、応募期間内に申請書を提出しましょう。
クラウドファンディングで、飲食店の開業資金を調達する方法もあります。クラウドファンディングは、「クラウド(群集)」と「ファンディング(資金調達)」をあわせた造語です。
クラウドファンディングを利用する場合、主にインターネットで概要や目標を発信し、不特定多数の人から少額ずつの資金調達を目指します。クラウドファンディングのメリットやデメリット、活用方法を確認していきましょう。
融資や補助金、助成金と比べて要件が少ないため、手軽に調達しやすい点がクラウドファンディングを利用するメリットです。利息の支払いや担保提供なども必要ありません。
また、クラウドファンディングで資金調達することで、自分が開業する店の注目度が高まりPR効果が見込める点もメリットです。支援した人が、開業後に来店することもあるでしょう。
クラウドファンディングのデメリットは、調達するまでに時間がかかる点です。また場合によっては、目標とした金額に達しないこともあります。
支援の見返りとして、リターンの内容を考えて提供しなければならない点もデメリットです。多くの支援を集めるためには、充実したリターンを用意しなければなりません。ただしリターンに力を入れすぎると、開業前後にコストが重くのしかかります。
クラウドファンディングで資金調達する際の流れは、主に以下のとおりです。
利用するクラウドファンディングサイトを検討する
内容を企画し、プロジェクトページを作成する
プロジェクトページが完成したならば、公開して資金調達を開始する
プロジェクトページをできるだけ多くの人に知ってもらうようにする
目標額に達したならば、リターンを送る
クラウドファンディングでは、多くの人に知ってもらわなければ目標額になかなか届きません。SNSなどを駆使し、クラウドファンディングをはじめたことを広めましょう。
テーブルチェックでは株式会社マクアケが運営するクラウドファンディングサービス「Makuake」と連携いたしました。
詳しくはプレスリリースをご覧ください。
アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」と提携。予約システムを特別価格で提供
親戚や知人に頼み、開業資金を調達することもあります。親戚や知人から借りるメリットやデメリットも把握しておきましょう
親戚や知人から借りるメリットは、相手が借入に納得さえしてくれれば、手続きの手間がかからない点です。銀行から融資を受ける場合、本人確認書類の提示だけではなく、創業計画書なども作成しなければなりません。
また相手との交渉次第ですが、金利がかからない点もメリットです。返済期間も比較的柔軟に対応してもらえるでしょう。
親戚や知人からは、心理的に金額の大きい借り入れを頼みにくい点がデメリットです。そもそも、相手が数百万円から数千万円の資金を用意できるとは限りません。
返済期間を柔軟にできるといえども、遅れると関係性が悪化しかねない点もデメリットです。親戚や知人が相手でも、約束したことはしっかり守らなければなりません。
そのほか、金額が大きいと贈与ともみなされかねないため、税金を課されないために借用書を用意するなどの点に注意が必要です。
飲食店の開業には、念入りな準備が必要です。以下のようなステップで準備を進めましょう。
コンセプトの設計
事業計画書の作成
物件探し
資金調達
店舗の内装・外装工事
資格取得と行政への届出
備品・設備の購入
店舗の宣伝と人材確保
ロールプレイング
開業
特に、事業計画書の作成は融資を受ける際に必要です。事業計画書では、事業内容や経営戦略、今後の方向性や収支計画などをまとめます。金融機関から融資を受ける際に提出が求められるだけではなく、開業後の進捗管理や意思決定などにも活用できるため、必ず作成しましょう。
また、物件探しや店舗の内装・外装工事、備品や設備の購入は、開業にかかる初期費用にダイレクトに関係します。事前に策定した予算やコンセプトに合わせて、適切なものを選びましょう。
飲食店開業に必要な資格取得や行政への届出も、開業にあたって必須の項目です。飲食店を運営するためには、「食品衛生責任者」を1名以上配置する必要があります。規模が30人以上の場合は、「防火管理者」の設置も義務です。
さらに、開業のためには保健所から営業許可書を取得する必要があります。また、深夜0時以降に酒類を提供する場合は「深夜酒類提供飲食店営業届」の届出、個人で開業する場合は「個人事業の開廃業等届出書」の提出が必要です。そのほか、飲食店の業種・業態によって必要な届出はさまざまなので、必ず確認し、開業前に必ず届出を行いましょう。
飲食店の開業に必要な資格については、以下の記事をご覧ください。
飲食店の開業に必要な資格とは?取得方法や費用・その他届出について解説
また、開業準備について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
飲食店を開業する前に準備すべき9つのこと。失敗しない着実な手順とは?
参考:e-Gov「消防法」
参考:東京都福祉保健局「改正食品衛生法の営業許可と届出(令和3年6月1日から施行)」
飲食店の開業に必要な資金総額の把握も重要です。飲食店開業にあたって、以下の費用をシミュレーションしておかなければなりません。
初期費用:物件取得費用や店舗投資費用
運転資金:開業後、店舗運営にかかる費用
生活資金:開業後に発生する生活費
ここで、それぞれにかかる費用をイメージしておきましょう。
【初期費用の把握】
初期費用は、大きく以下の2つに分けられます。
物件取得費用
店舗投資費用
物件取得費用は、物件を契約する際にかかる費用のことです。契約時に、保証金として家賃数ヶ月分の前払い金や、礼金、仲介手数料などがかかります。特に、保証金は10ヶ月分といった長期間分が必要になる場合も多いでしょう。家賃が20万円の場合は、契約時に200〜300万円ほどかかる計算です。
店舗投資費用は、飲食店として開業するために必要な費用で、外装・内装工事費用や、厨房設備とほかに必要な備品の費用、人件費、販促費などが該当します。飲食店の規模や業種、業態、前のテナントの設備や内装の有無などで金額はさまざまです
【運転資金の把握】
運転資金とは、開業後の店舗運営にかかる費用のことです。「開業の際に考慮する必要はないのでは」と考える方も多いですが、事業が軌道に乗るまでの間、赤字を補てんできる額を用意する必要があります。
飲食業への出資実績の多い日本政策金融公庫が発行している「創業の手引き+」によると、開業後軌道に乗り始めた時期について、約6割の企業が起業から半年以上かかっています。3ヶ月以内と答えた割合は26.1%で、3ヶ月超6ヶ月以内が10.1%です。割合が1番多いのが6ヶ月超え1年以内で、28.2%という結果が出ています。
参考:日本政策金融公庫「新たに飲食業を始めるみなさまへ 創業の手引き+」
この結果を見ると、開業から約半年は十分な利益を出すことが難しいため、6ヶ月程度の運転資金を事前に準備することが必要であることがわかるでしょう。初期費用だけではなく、事前に運転資金を把握することが重要なのです。
【生活資金の把握】
飲食店開業に直接関係するものではないですが、生活資金もあらかじめ想定しておかなければなりません。飲食店経営がすぐに軌道に乗らない場合、手元にあるプライベート資金でのやりくりが必要であることが理由です。
毎月かかっている生活費を算出し、その金額を6倍した半年分の生活費をどのように用意するのかをあらかじめ検討しておきましょう。また、飲食店開業にあわせて引っ越しを考えている場合は、さらに上乗せして計算しなければなりません。
飲食店の開業にかかる費用は、1,000万円前後が相場です。日本政策金融公庫の「創業の手引き+」によると、飲食店開設にかかる合計費用の平均は883万円というデータが出ています。その内訳は以下のとおりです。
内外装工事:368万円
機械・什器・備品等:169万円
テナント賃借費用:155万円
もちろん、借りる物件や店舗の規模によっても費用は異なります。特に、内装や設備などが全くないスケルトン物件を利用する場合は、厨房設備や機器の準備などの店舗投資費用に数百万円ほどかかり、さらに費用がかかることが多いです。一方、以前のテナントの内装や設備などをそのまま利用できる居抜き物件を利用する場合は、費用を抑えられます。
上記は開業自体にかかる費用であり、実際は、開業後の店舗経営に必要な運転資金や当面の生活費なども必要です。同じく日本政策金融公庫の「創業の手引き+」に掲載されている開設資金の調達先のデータを見ると、合計額は1,066万円であり、1,000万円を超えます。
このように、ランニングコストを含めた開業資金は1,000万円を超えるため、トータルで1,000〜1,500万円ほどが必要です。前述のとおり、事業が軌道に乗るまでの間、資金繰りに困る場合が多いため、運転資金や生活費はあらかじめ準備しておきましょう。目安として、家賃の10%、給与の15%、そのほか経費の10%を6ヶ月分用意しておくのが安心です。
飲食店開業に必要な資金総額を算出する方法について解説します。以下の4つステップで算出してみましょう。
①資金計画を検討する
②収支計画を検討する
③返済計画を立てる
④売上予測を立てる
特に、外部から資金調達する際は、資金計画だけではなく返済計画を立てることが重要です。売上予測や収支計画から利益を算出し、利益から毎月返済する前提で返済計画を策定しましょう。
まずは、資金計画を検討します。資金計画とは、開業に必要な資金を把握し、その資金をどのような方法で調達するかを検討することです。
必要な資金を初期費用と運転資金にわけ、それぞれ具体的な内訳と費用の目安を記載します。費用がわかったならば、その横に資金調達方法と調達金額の内訳を記載しましょう。資金調達方法としては、以下のような方法が挙げられます。
自己資金
親戚・知人からの借入
金融機関からの融資
投資家からの投資
補助金・助成金
クラウドファンディング
また、資金調達方法と併せて、返済方法についても忘れずに検討しましょう。
資金計画がずさんな場合、経営に失敗してしまう可能性が高いです。飲食店の開業で失敗してしまう主な原因や、失敗しないための対策などについては、以下の記事も参考にしてください。
収支計画とは、開業後の収支見込みのことです。今後の見通しを立てるためには、収支計画を検討しなければなりません。どれくらいの売上があり、どれくらいの経費がかかるのか、その結果どのくらいの利益が出るのかを具体的に検討しましょう。
利益=売上高ー(売上原価+経費)
で求められます。経費は人件費やテナント料、支払い利息などです。
収支を予測する際は、経営環境や業界の状況、競合の様子、設備能力や価格の推移などから総合的に判断しましょう。開業当初と軌道に乗った後の2パターンについて収支計画を検討すると、具体的な見通しを立てられます。
外部から資金を調達する際は、返済計画も立てましょう。手元に残るお金は、利益全額ではありません。利益から借入金の返済金を差し引いた額(個人事業の場合は、さらにそこから家計費を差し引いた額)であることを理解する必要があります。
借入金は、毎月の利益から返済していくことが一般的です。収支計画で検討した利益を参考に、毎月いくらずつ返済するか、いつ頃返済し終えるかなど、具体的な返済計画を検討しましょう。事業が思うように進まない場合もあるため、ゆとりのある返済計画を立てることが大切です。
収支計画を立てるうえでは、売上予測も重要です。業種によって売上予測の立て方は変わります。飲食業のようなサービス業の場合は、以下の計算式を用いましょう。
売上=客単価×座席数×回転数×客席稼働率
客単価は時間帯、回転数は時間帯や曜日によって異なります。そのため昼か夜か、平日か休日かで分けて計算しましょう。
また、客席稼働率にも注意する必要があります。客席稼働率は、客席が実際にどのくらい埋まっているかを表す数値のことで、4人席を2人で使用する場合の客席稼働率は50%です。回転数が多くても客席稼働率が低ければ、その分売上が下がってしまいます。売上予測を立てる際は、回転数や客席稼働率を上げる仕組みについても検討しましょう。
ここまで開業資金の算出方法や調達方法について解説しました。開業資金について考えるうえでは、開業資金を抑える方法を検討することも重要です。ここでは、飲食店の開業資金を抑えるための以下のコツについて紹介します。
事業計画の見直しを行う
中古品を使って初期費用を抑える
DIYをして内装外装費を抑える
それぞれのポイントをおさえ、無理のない資金計画に活かしてください。
開業資金を抑えるためには、まずは事業計画を見直し、資金の使い方を再考しましょう。資金の使い道を細分化して検討したり、優先順位をつけたりすることで、開業時には不要なものが出てくる可能性があります。「あったら便利」程度のものについては、事業が軌道に乗ってから揃えることも可能です。
また、集客や内装工事などを自分で行えば、費用負担を抑えられます。事業計画を見直し、不要なものや節約できるものを洗い出しましょう。
中古の備品や厨房機器を使用することで、初期費用を抑えられます。中古の業務用厨房機器を扱う専門サイトもあるため、ぜひ新品と比較検討して選んでください。机や椅子などの家具は、リサイクルショップで安く中古品を手に入れられます。
また、前のテナントの設備を利用できる居抜き物件を選べば、その分初期費用の節約が可能です。開業費用をとにかく抑えたい方は、スケルトン物件ではなく居抜き物件を選びましょう。
内装や外装を業者に依頼すると、決して少なくはない費用がかかります。DIYに自信がある方は、内装や外装を自分で行うこともおすすめです。全ての工事は無理であっても、壁の塗装を自分で行うだけで数万円の節約につながります。
この方法は業者に依頼する場合よりも、愛着のある店舗に仕上がる可能性も高いです。手作り感がほかの店舗との差別化につながる場合もあり、節約以外のメリットもあるでしょう。費用を抑えてこだわりの店舗に仕上げたい方は、ぜひDIYも検討してみてください。
この記事では、飲食店の開業に必要な資金の内訳や目安、算出方法、調達方法などについて解説しました。飲食店の開業には、平均1,000万円程度の費用が必要です。開業する際は、早めに資金調達を行い、余裕を持った資金計画を策定しましょう。
また、開業資金を抑えるコツについても解説しました。事業計画書を見直し、不要な項目や節約できる部分を洗い出すことで、開業資金を抑えて無理のない資金計画を立てられます。この記事を参考に、開業に必要な資金について検討してみてください。
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