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2022年8月22日 · 読了時間:5 分
観光分野でよく聞くインバウンドとは、外国人観光客が日本を訪れることを示す用語です。
本記事では、観光インバウンドとはどのようなものかをわかりやすく説明した上で、飲食店で訪日観光客が抱える悩みを紹介します。
インバウンド(inbound)は、もともと「内向き」や「外から中に入り込む」などを意味する言葉です。インバウンドの対義語として、アウトバウンド(outbound)という言葉もあります。
近年、インバウンド本来の意味から派生し、観光やビジネス、ITなどさまざまな分野で使われるようになりました。ここでは、インバウンド観光や営業のインバウンドの意味について、簡単に解説します。
我が国においてインバウンド(観光)とは、外国人が旅行で日本に訪れるということを指します。インバウンドが盛り上がると、飲食店や宿泊、観光、小売業など国内のさまざまな業種で経済効果を期待できます。
なお、インバウンドの対義語であるアウトバウンドは、観光分野において日本人が海外へ旅行するという意味で用いられます。
ビジネスシーンでインバウンドという言葉が用いられる場合、「主に取引先から自社への働きかけ」を意味します。
インバウンド営業とは、飛び込みなどで手当たり次第に営業(アウトバウンド営業)するのではなく、問い合わせが予想される見込み客に絞って営業することです。
本記事では、観光分野におけるインバウンドを中心に解説していきます。
官民協力による訪日外国人旅行者向けの観光促進活動、「ビジット・ジャパン事業」が2003年に開始されてから2019年まで、訪日外国人の旅行者数は着実に伸びていました。
2012年の訪日外国人客数は836万人でしたが、7年後の2018年には約3.8倍の3,119万人を記録しています。
訪日外国人旅行者数が3,000万人を突破した一方で、さまざまな課題も浮上しています。ここでは、インバウンドが注目された背景や現状と課題について確認していきましょう。
インバウンドが注目された背景のひとつが、ビジット・ジャパン事業の開始です。事業開始時の目標である「2010年に訪日外国人旅行客数1,000万人」は、3年後の2013年に達成しました。2016年には「2020年に4,000万人、2030年に6,000万人」という新たな訪日外国人旅行者数の目標を設定しています。
また、2013年に2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定したことも、インバウンドが注目されるきっかけとなりました。
当初、東京オリンピック・パラリンピック開催の影響で、2020年には訪日外国人客数が大幅に増加することが期待されていました。しかし、実際は2020年に新型コロナウイルスが拡大したことで、訪日外国人数の大幅減少という結果になったのです。
2019年の訪日外国人客数は3,188万人であったのに対し、2020年は412万人、2021年は25万人にまで減少しています。2020年、2021年はインバウンド観光が冷え込んだ年といえるでしょう。
その一方で、2022年からはインバウンド観光復興の兆しも見受けられます。政府は同年6月10日より、旅行業者等を受入責任者とする添乗員付きパッケージツアーによる外国人観光客を受け入れることを発表しました。
ただし、2020年6月10日時点で以下の課題があることから、新型コロナウイルス流行以前のような数の訪日外国人客を受け入れるまでにはまだ時間を要するでしょう。
受け入れ対象となるのは感染リスクの低いとされる一部の国に限定される
当面は添乗員付きのツアー客に限定される
マスク着用をはじめとする「外国人観光客の受入れ対応に関するガイドライン」の内容遵守を外国人観光客に求めなければならない
観光分野において、「インバウンド観光」以外でも「インバウンド」にさまざまな言葉を加えた造語が使われています。代表的な造語が、以下の4つです。
インバウンド効果
インバウンド消費
インバウンド需要
インバウンド特需
インバウンドについての理解をさらに深められるように、それぞれの意味について詳しく解説していきます。
インバウンド効果とは、訪日観光客が日本に経済効果を与えることです。訪日観光客が日本滞在中に商品購入やサービスを利用することで、日本の経済成長につながります。
また、訪日観光客が首都圏だけではなく日本の地方都市を訪問すると、対象地域の雇用創出や消費拡大につながります。そのため、地域活性効果もインバウンド効果のひとつといえるでしょう。
さらに、訪日観光客が現地で日本文化を体験し、日本の伝統に関心を持つようになることもインバウンド効果です。興味を持った外国人が訪日以降に関連する物品やサービスを購入するようになれば、日本の伝統文化を守ることにもつながります。
インバウンド消費とは、訪日観光客による日本国内での消費のことです。2015年頃に話題になった「爆買い」も、インバウンド消費の一例といえます。
観光庁の発表によると、2019年における訪日外国人の旅行消費額は4兆8,135億円でした。消費額のうち、買い物代が占める割合がとても多く、宿泊費、飲食費があとに続きます。
国籍・地域別で見ると、中国からの旅行客の消費が多く(36.8%)、2位が台湾(11.5%)、3位が韓国(8.8%)です。ただし、1人当たり旅行支出額の順位は異なり、1位はオーストラリア(24.8万円)で、英国(24.1万円)、フランス(23.7万円)が続きます。
インバウンド需要とは、訪日観光客による日本の商品やサービスに対する需要(ニーズ)のことです。インバウンド消費とインバウンド需要は、同じような意味合いで用いられることもあります。
インバウンド特需とは、訪日観光客増加がきっかけとなって経済に良い影響を与えることです。インバウンド消費やインバウンド需要と同じように使われることもあります。
オリンピックやW杯などの世界的なイベントが開催されるタイミングは、インバウンド特需が起こりやすい事例です。また、2022年6月10日の訪日観光客受け入れ緩和をきっかけに、インバウンド特需が発生すると予想する見方もあります。
2019年に観光庁が実施した調査結果によると、「旅行中に困ったことはなかった」と答える訪日観光客が38.6%を占める一方で、「ゴミ箱の少なさ」や「施設等のスタッフとのコミュニケーションが取れない」、「無料公衆無線LAN環境」、「クレジット/デビットカードの利用」など、さまざまなことで困っている人もいるようです。
新型コロナウイルス流行前の2019年、訪日観光客が旅行で使う飲食費は1兆397億円もの額を計上していたため、インバウンド観光がまた盛り上がることで国内における飲食店の売上増加が期待できます。
しかし、訪日観光客の気持ちを理解していなければ、どれだけインバウンドが盛り上がっていても自分の店に来てもらえません。
今回は、特に飲食店に関係がありそうな以下3つの悩みに焦点を当て、詳しく解説していきます。
店員とのコミュニケーションが取れない
決済しにくい
Wi-Fi環境が整っていない
2019年に実施された観光庁の調査結果によると、「施設等のスタッフとのコミュニケーションが取れない」を旅行中の悩みとして挙げた訪日外国人旅行者の割合が17.0%で、困ったことの中で第二位でした。飲食店に置き換えて考えると、店員とのコミュニケーションに悩みや不満を抱えている訪日観光客が一定数いるといえます。
世界的な教育機関、EFエデュケーションファーストが独自に調査した英語能力指数ランキングによると、2021年時点で日本は世界112ヶ国中78位、アジア24ヶ国中13位と、決して高い位置にいるとはいえません。
日本人の英語力の低さや、四方八方を海に囲まれた島国でもともと外国人との交流が少なかった点などが、訪日観光客とのコミュニケーションがうまくいかない要因となっているのではないでしょうか。
飲食店における決済のしにくさも、訪日観光客の抱える悩みといえるでしょう。観光庁の調査結果で旅行中に困ったこととして、「クレジット/デビットカードの利用」と回答した訪日観光客が7.0%、「その他決済手段(モバイルペイメント等)」が2.6%存在しました。
2018年における世界主要国のキャッシュレス決済状況を見ると、上位の韓国は94.7%、中国が77.3%、カナダが62.0%に及ぶにもかかわらず、日本は24.2%にとどまります。キャッシュレス決済先進国との意識の違いも、訪日観光客が決済面に不便を感じる要因といえるでしょう。
ただし、キャッシュレス導入を進めるために政府もさまざまな対策を打ち出しており、伸び率では上位に位置します。キャッシュレス普及策の効果が出てくれば、訪日観光客が「決済しにくさ」を感じることも減少するのではないでしょうか。
旅先で情報を取得するため、Wi-Fi環境は訪日観光客にとって欠かせない存在です。しかし、日本のWi-Fi環境に不便さを感じる訪日観光客も少なくありません。
観光庁もWi-Fi環境の問題に危機意識を持ち、訪日観光客がスムーズに無料の公衆無線LANを利用できるようにいくつかの対策を講じました。
その結果、2018年の観光庁の調査結果では18.7%の訪日観光客が「無料公衆無線LAN環境」に対して不満を抱えていましたが、翌2019年には11.0%まで減少しています。
参考:観光庁「訪日外国人旅行者の「困った」が減少!一方、地方部の受入環境には課題も~受入環境整備の促進に向けて、訪日外国人旅行者を対象に、訪問地ごとの状況についてアンケート調査を実施~」
インバウンド対策とは、訪日観光客が日本滞在中にできるだけストレスなく快適に過ごせるように、施策を講じることです。訪日観光客が抱える代表的な悩みを解決するため、飲食店ができるインバウンド対策の代表例として以下が挙げられます。
外国語対応を心がける
Wi-Fiを使えるようにする
決済システムを整える
簡単に予約できるようにする
ここでは、4つの対策について解説していきます。
インバウンド対策の概要や具体例についてより詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
訪日観光客と店員とのコミュニケーションを改善するには、「英語対応可能なスタッフを雇う」、「接客時に使う機会が多い英語フレーズを従業員教育で伝える」といった方法があります。
また、多言語対応のメニューを作っておけば、コミュニケーションが難しくても訪日観光客がスムーズに注文できるようになるでしょう。
アレルギーや宗教上の問題があるため、メニュー作成時は細かく原材料を記載することがポイントです。多言語で食事制限にも配慮したメニューを作成すれば、競合店との差別化になり、訪日観光客の集客につながります。
インバウンド集客の方法や注意点については、以下の記事も参考にしてください。
以前より不満が減ったとはいえ、未だに日本の無料公衆無線LAN環境に不満を感じる訪日観光客が一定数存在します。そこで、自店でWi-Fiを使えるようにしてアピールすれば、訪日観光客の来店率アップにつながるでしょう。
まずは専門業者に申し込みの連絡をした上で、工事をおこなえばWi-Fiが使えるようになります。ただし、Wi-Fiを導入することで毎月コストがかかる点、飲食にお金をかけずにWi-Fi目的で長時間滞在する客も来店しうる点に注意しましょう。
訪日観光客の望む決済ができなければ、インバウンド需要を期待できません。自店での決済システムを見直し、整備することが大切です。
クレジットカードやモバイル決済が訪日観光客の代表的な決済手段として挙げられます。また、多言語対応で事前にネットで予約や決済のできるシステムを導入しておくと、訪日観光客が安心して利用できるでしょう。
来店してからのインバウンド対策が万全でも、来店していただかなければ意味がありません。そこで重要なのが、予約受付です。日本に来る前に情報収集し予約までする訪日観光客も想定されますし、日本に滞在中に予約を検討する人たちも多数いらっしゃいます。そこで、予約受付が日本語対応の電話のみでは、機会損失につながってしまう可能性が高まります。
ネット予約を導入したり、ホテルコンシェルジュと連携したりなど、いまから訪日観光客に来店してもらうためのインバウンド対策にもしっかり取り組んでおきましょう。
インバウンド観光とは、外国人が旅行で日本に訪れることです。インバウンドは、観光業だけでなく飲食店にも多大な経済効果を与えます。
インバウンド効果を自店に取り込むには、多言語メニュー作成やキャッシュレス決済導入により、「店員とのコミュニケーションが取れない」や「決済しにくい」などの訪日観光客の悩みを解決することが鍵です。
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