TableCheck Author
2023年2月20日 · 読了時間:5 分
9月13日に開催されたセミナー「グルメサイト後の飲食店検索、プラットフォームラウンドテーブル」
当セミナーにご登壇された株式会社mov 口コミコム事業戦略部部長 新井勇作氏に、セミナーではお話できなかったグルメサイト離れの現状やGoogle一強時代の問題点、今後の飲食業界のあり方ついてお話を頂きました。
●Google利用の現状、メリット・デメリット
――テーブルチェックの調査レポートでも発表していますが、飲食店、ユーザー双方の「グルメサイト離れ」は年々進んでいる傾向がある一方で、Googleマップの影響力が強まっている傾向も顕著です。新井さんは、この現状をどう捉えていますか?
新井:ここにきて大きな地殻変動が起こりつつあるのは実感していますね。これまでは食べログさんが、そのユーザー数の多さから世間の支持を集めていたところがありましたが、その勢力図が変わりつつあります。
口コミの数に対して「質」が重視され始めましたし、ユーザーが口コミをどう判断するか、つまりリテラシーが今後の大きなトレンドになると考えています。
Googleがその強いポジションを維持する流れは変わらないでしょう。だからといってこれから先、すべての口コミサイトがGoogleに置き換わることはありえないと思います。例えば、食べログが息を吹き返すこともあるかもしれないし、まったく別のサービスが生まれてくるかもしれない。
そもそもGoogleは、その「量」においては圧倒的ですが、はたして「質」においては「ナンバーワンか?」という疑問も残ります。
「食べログの評価が低い店=美味しくない店」、「Googleの評価が高い=いいお店」という方程式が絶対正しいとは限りません。この問題が更に根深いのは、「他の人がいいと言ってるから、なんだかいい気がする」という同調圧力に弱い日本人特有の考え方もあると思います。
そんななかでは、点数や口コミよりも、自分にとって「合う/合わない」に特化した口コミサイトがあったほうが、面白いかなとも思います。
僕個人としても、「人生はいろんな選択肢があった方がより豊かになる」と思っているので、それが飲食ならばなおのことです。「他の人がいいと言っているか」どうかよりも、自分の趣味、趣向にあったお店の情報を得られるとさらに面白いですよね。
●グルメサイト離れが進んでいる問題点
――このグルメサイト離れが進んでいる現状の問題点とは、一体何でしょうか。
まずはグルメサイトの定義から整理しましょう。
ここでは、Googleマップはグルメサイトにカウントしません。
日本国内におけるグルメサイトとして、食べログ、ホットペッパー、ぐるなび、Retty、ヒトサラ、一休、Ozmallを代表的なグルメサイトと位置づけてお話させていただきます。
これらグルメサイトの問題点を一言で言うと「帯に短し、たすきに長し」です。
まずグルメサイトが、あらゆるお店すべてを網羅しているかといえば、おそらくアプローチしきれていません。
ここで少し話がそれてしまうのですが、かつて「YAKINIQUEST」というサービスがあったのをご存知でしょうか。これは簡単に言うと、ただひたすら「お肉のおいしいお店」だけを紹介していたサイトなんです。グルメサイトというよりは、グルメブログの“はしり”みたいなものですね。
ただグルメサイトだと、ここまで尖れてないんですよね。「グルメサイト」と標榜する以上、あらゆる情報を網羅する必要があるし、「YAKINIQUEST」のように特定のテーマを深く追求するだけでは運営しきれません。
またグルメサイトにはグルメ情報、つまりレストラン店の情報しか掲載されていません。でも僕たちが普段、レストランに行く際に調べるのは、なにもレストランの情報だけではありませんよね。
たとえば、お店について調べたついでに、その道順も調べるし、「お店に行く前に映画を見たいから、最寄りの映画館を調べたい」と思うかもしれません。またそのお店で食事した後に行く二次会のバーを調べるかもしれません。常に僕たちは、レストランの情報に付随した情報も検索しているんです。
しかしグルメサイトで得られるのは、お店に関する情報や口コミだけ。それに付随した情報はカバーできず、どうしてもGoogleマップと比較すると、生活の接点があまりにも違いすぎる。圧倒的に地図サイトの方が体に”まとわりつく”感覚があるんです。
●グルメサイトも独自性が必要
そこで僕が個人的にも「あったらいいな」と思うのは、世代ごとに特化したグルメサイトです。
たとえば、Z世代向けのお店だけに特化したグルメサイトはどうでしょうか。Z世代は、「美味しい/美味しくない」じゃなくて、「映える/映えない」などの、中高年とは違う評価軸を持っています。しかし現実には、若い世代はお金がないし、グルメサイトは、中高年や会社で予算のある人が見るように設計されている。そのため若い世代のグルメサイト離れが加速していきます。
他にも、エリア別だったり、ちょっと露骨かもしれませんが「年収別」のグルメサイトがあったっていい。「年収2000万円以上向けのグルメサイト」とか(笑)。もしくは職種別に「東京近郊の秘書1000人が口コミを書いているサイト」とかもいいと思いますね。
食べログさんではそれこそ「寿司百銘店」みたいな企画も打ち出していますが、やっぱり総花的なまとめ方なってしまう。
つまりグルメサイトは尖っていくべきで、特定のジャンルに特化したこれまでとは別の切り口を持ったグルメサイトの需要は伸びていくと考えられます。
もしそこまで尖ったグルメサイトがあれば、店舗側からしても「掲載したい」と思うお店も増えていくのではないでしょうか。
そういった点は、あらゆる情報を網羅したGoogleマップでは、実現できないと思います。Googleマップはその性質上、個人情報にアクセスしづらいため口コミを書いた人が誰だかわからない。投稿主が特定できない以上、口コミをすべてフラットに扱ってるわけですから。
もし今後、グルメサイトの独自性を打ち出すチャンスはそのようなところにあるのかもしれませんね。
●求められるユーザーのリテラシー
――Googleマップも店舗目線では、人種差別的なレビューが投稿される危険性もありますし、ユーザー目線からするとステマのようなレビューも横行しているという問題点も無視できません。お店、ユーザーともに口コミサイトとどのように付き合っていけばよいでしょうか。
最近、若い人と話していると、ネットリテラシーが高まってることを実感します。これまでは食べログを見たら、「あ、ここのお店って3.3だから、あんまイケてないんだろうな」と点数だけを見て表面的な判断を下している人も少なからず見受けられました。
しかし実はほとんどの人が高得点のレビューをしていても、1人だけ★1をつけていて、全体の点数がガクッと下がってしまうこともある。またよく見たらレビューの投稿者はたったの4〜5人だけで構成されている、なんてことも少なくありませんよね。
最近の若い世代は、そのあたりの細かな点まできちんと見ています。なかには、「大多数が高評価のなか、悪い点数をつけているのが誰か」というところまで見に行く人も増えています。
★1をつけるなど、口コミサイトでお店を酷評する人って極端なケースも少なくありません。あらゆるお店に対して低評価を下していたり、1つのお店にポジティブなことを書いていたと思ったら、なにか気に食わないことがあれば全部★1をつける人もいる。ときにクレーマー気質の人も見受けられますね。そのあたりまで含めて口コミを判別するリテラシーを持つ人が、若い世代には増えている印象です。
一般的にも、悪い評価を目にした際には、「どんな人が悪い評価をつけているのか」をチェックすることが大切です。これがユーザーの口コミサイトとの付き合い方のひとつのポイントと言えると思います。
●ユーザーが信頼する口コミとは
またGoogleマップでは、口コミに対してお店側から返信が1回だけ書ける仕様になっていますよね。
もしも低評価レビューや酷評が寄せられた際には、なるべく早い段階でお店側から「この度は、不快な思いをさせて申し訳ありませんでした。〇〇様からいただいたご指摘をチームスタッフ一同で共有し、今後こういったことがないように努めて参ります。よろしければまたぜひお越しください。この度はご来店いただき、ありがとうございました。店主」というような返信を書くのも手ですね。それを見たユーザーからすると「どちらの方がまともか」は、もはや明確です。口コミそのものではなく、お店側が真摯に対応している誠実さまで見られているんです。
お店側が返信をすると、その口コミを書いたユーザーにもアテンションが飛びます。たとえその人が怒りに任せて低評価レビューを書いたとしても、2〜3日経ってお店の対応も含めて見直すことで「なんて大人げないことして書いたんだ」と振り返って評価を取り消すことも少なくありません。そういう意味でもお店からの返信は有効だと思います。
もっと言ってしまうと、4.7とか4.8といった口コミの点数が高いお店でも、いくつか2や1といった低評価が入ってるだけで、格段に説得力が増すんですよね。
ネガティブな評価がいくつか入ることによって、ポジティブな評価の信憑性が増していくんです。 全員が等しく5ばっかりつけてると「これ、やらせじゃない?」とうがった見方をされてしまう。お店側が全部の評価を高得点にしたい、いい口コミだけにしたい……と思っていると、かえってボロが出るわけです。
料理のスパイスのように、高評価の中にたまに低評価が混ざっているからこそ、見ている人にとってもお店側にとっても、その口コミがよりリアルになり、信頼性が上がってくるのだと思います。
●飲食店のするべき口コミ対応
――もしもネガティブな口コミを書かれた際、飲食店はどのような対応を取ればよいのでしょうか?
お店側はネガティブな評価をことさらネガティブに捉える必要はないと思います。低評価も含めて口コミは「お客様からの忖度のないフィードバック」と思うとかなりラクになると思います。
本来ならば、たとえなにかお店に難があっても多くのお客さまは意見を言うこともなく、スーッと離れていくことが多いんですよね。ネガティブなことも言わずにただフェードアウトしていったお客さまは二度と来店することはありません。
ポジティブな口コミを書いてくれても、ネガティブな口コミを書いてくれても、口コミにはひとまず”ありがとう”の姿勢で向き合うと良いでしょう。
もちろん、ネガティブな口コミを書かれることに抵抗のある方も多いと思いますが、現場のオペレーションや接客の改善に活かしたり、リピーターを育て、新規顧客獲得にもつなげる。そのような挽回のチャンスをいただいたと捉えてみてはどうでしょうか。
――事実無根の投稿や差別的な口コミ、店舗情報の改ざんなど悪質なトラブルをお店が防衛する手立てはありますか?
事実無根の投稿の場合は、通報することが大事ですね。差別的な発言や個人を指定した暴言に対しても、プラットフォーム側へ問題を報告する機能はありますので、ロジカルに通報するのが重要かと思います。明らかに悪質な場合、迅速に対応してもらえるはずです。
これは、よくある話なのですがピザの宅配チェーン様って「〇〇ピザは青」とか「●●ピザは赤」というようにカラーが決まってるんですよ。そこで赤いピザ屋さんのお店に対して、「青い配達員の態度が悪い!」という投稿があった場合も、きちっと事例を交えて「間違われてますよ〜」とやんわりと指摘した上で、報告すると消えたりしますね。
悪質な口コミはお店の損失にも繋がりかねません。飲食店としてもしっかりと管理・監視をして付き合っていくことが大事ですね。
●形態が変わるかもしれないが、口コミ自体は変わらない
――今後、口コミプラットフォームは、どのような展開を迎えるでしょうか? 新井さんが口コミプラットフォームに求めるものはありますか?
口コミプラットフォームは、百花繚乱になってほしいと思います。
口コミプラットフォームでは、ときに辛口な口コミも散見されますが、それを鵜呑みにするのは危険です。もしも投稿者が自分と味覚や好みに完全に一致してるのなら話は別ですが、ときにこだわりの強い投稿は、偏りもあるのも事実です。
そしてそのあたりにすでに気づいているユーザーも多い。ユーザーのネットリテラシーが底上げされることで、グルメサイトもあり方そのものも変わるかもしれません。
そもそも人間には、第三者が評価したものに安心感や信頼感を抱くという性質がある以上、口コミサイト自体は、今後も続いていくはずです。
ただそれが形態を変えて、もっと違う形になる可能性は多いにありますよよね。口コミがテキストではなく動画になるなど、フォーマットは変わるかもしれない。繰り返しになりますが、”第三者がおすすめする”という構図自体はなくならない気がしますね。
●SNS、地図アプリ、グルメサイトの使い分け
――ちなみに新井さんがお店を選ぶときは、どんなふうに検索されるんですか。
僕の場合は、SNS検索→検索エンジン→地図サイト→グルメサイト、という流れが鉄板ですね。
なにか食べたいものを見つけたときに、まずはTwitterでチェックします。普段からフォローしている「この人がおすすめしているお店なら、間違いない」という信頼しているアカウントがいくつかあるのですが、まずはそういうアカウントを参考にしますね。
お店選びではInstagramも有用ですが、Instagramは「表参道 ランチ」のように2語検索ができないのが弱点です。その点では僕個人はTwitterのほうが便利かと思います。
Twitterで「表参道 ランチ」で検索して「どうやら●●っていう名前がお店が良さそうだぞ」とわかったら今後は、「●●(店の名前) 表参道」とGoogleで検索します。そこでヒットしたGoogleマップの口コミを読んだあと、最終的に食べログをチェックする、という流れですね。
これによって、ハズレを引くことは確実に減りましたね。実はこのやり方だと、海外に行っても通用するんです。日本国内なら、食べログを見るほうが手っ取り早いかもしれませんが、地図情報が発達しているヨーロッパとか行くと効率的なので、覚えておいて損はないと思いますよ。
TableCheck Author
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