TableCheck Author
2021年6月24日 · 読了時間:4 分
2021年5月17日~19日の3日間にわたり、国内最大級のレストランテックイベント「ミライノオミセ -レストランテックで飲食DXの扉を開こう!!-」が開催されました。主催は株式会社イノベントと一般社団法人レストランテック協会、そしてTableCheckも特別協力として参加しました。
今回はそのコンテンツのひとつキーノートセッション「飲食店の現場から考える飲食業界DX 2021」の模様をご紹介。飲食店の運営に携わる側、飲食業界にテクノロジーを提供する側双方の視点から飲食業界にいま本当に必要なDXとは何か?をテーマにトークセッションしました。
NPO法人居酒屋甲子園 理事長 山崎聡さん
一般社団法人これからの時代の・飲食店マネジメント協会 代表理事 山川博史さん
一般社団法人レストランテック協会 代表理事 山澤修平さん
株式会社TabelCheck 代表取締役 谷口優
TableCheck PR 望月実香子(以下、TC)
TC: 飲食業界DXの定義とは、どのようなものでしょうか?
山澤: コロナ禍に限らずさまざまな外的要因によって、飲食店を取り巻く環境は急速に変化しています。その変化に対応すること、変化したあとの世界でどうやってビジネスモデルを作っていくか。その課題に対して、飲食店が必要なITツールを駆使して取り組んでいくことをDXと呼んでいます。
デジタル化やIT化はあくまでも手段。例えば、モバイルオーダーを導入するという“結果”は同じかもしれませんが、それは収益を上げるためだったり、人材育成のためだったりと、導入理由はお店によって違うはず。それぞれの店の“大義”があることがDXの大前提だと考えています。
TC: 飲食業界にDXは、そもそも必要なのでしょうか?飲食店の現場を長く見てきた山崎さん、いかがですか?
山崎: 必要だと考えています特にコロナ禍でデジタルの力を借りざるをえない環境に一気にシフトしてきていると感じています。その飲食店や会社の“存在意義”が転換期を迎えている今、デジタルを使って変わっていかなければなりません。実際、DXに興味を持っている飲食店はとても多いです。レジのシステムやアプリでの集客など、自分たちでは気付かないうちにDXが始まっているケースもありますね。
ただ、飲食業界はあまりDXが進んでいないと言われています。横文字の用語が多かったり、展示会で一方的にセールスプロモーションを受けて、ツールを導入したけど、現場にフィットせずに店長業務が逆に増えちゃったり、などの経験をしている人も多くいると思います。そういう人たちは「DX」という言葉に抵抗感を持っているんじゃないでしょうか。
谷口:「大義」、という観点はとても面白いですね。ただ単にIT化した、ではあまりお店にメリットが出ないと思います。うちは予約台帳サービスを提供していますが、予約台帳がiPadになって持ち運び便利とか、複数の人が同時に見られるようになっただけでは、意味がない。確かにコストカットや効率化にはなっていますが、「それを使って何をしたいのか」が最も重要だと考えています。
顧客管理に力を入れてリピーターを増やしたいのか、ネット予約の比率を上げて手数料コストを抑えていきたいのか、外国人の予約をスムーズに取れるようして売り上げを伸ばしたいのか、などお店それぞれの「目的」を見据えた上でITツールを選定していく必要があります。
山崎:その通りで、可能性がたくさんあることを提示していくのは大事ですね、その一方で、レストランテックに関する情報がすでに溢れかえっていて、何を選択していいか分からない、というのも現場サイドの事実としてあります。みんないいこと書いてあります。そりゃそうだ、と。(笑)
山澤:まさにその通りで、ソリューション営業って、今でこそ当たり前ですけど、普通はHPなどで下調べして、そのお店や会社の理念などを把握したうえで、経営者に提案していくべき。レストランテック界隈のソリューション営業が慣れていないのかなという印象もうけますね。それって、モノ売りの時代が長かったからだと思います。テック提供側も成長しないといけない。
TC: 本当に必要なITツールを見極めるにはどうしたら良いでしょうか?
山澤: ツールが必要かどうかは、お店によって異なります。例えば「人々が集まる場所を提供すること」がお店の目的なら、 オペレーションを機械化・仕組み化して、その目的のためにリソースを使えばいい。「お客様とのコミュニケーションで、満足度の高い顧客体験を提供する」のが目的なら、その機械は不要でしょう。
TC:飲食店の経営、コンサルティング、プロデュースなどを手掛けていらっしゃる山川さんは、どう見てますか?
山川: 私は、飲食店の経営もしていますが、飲食企業の本部や幹部の方々に対して人材教育や新規事業立ち上げなどのコンサルティングを提供する「これからの時代の・飲食店マネジメント協会(以下、これマネ)」の運営も行っています。これマネを通じて出合う飲食企業の方々とお話していても、やはりDXの必要性を感じますね
例えば、Zoomを使って店長会議をするなど、距離があって頻繁にサポートに入れない店舗や、物理的な制約があるところをオンライン化してマネジメントするなど、協会メンバーの方たちへのICT教育に励んでいます。
TC: DXは店舗オペレーションや教育を変えるほか、収益にも影響してきますか?
山川: 可能性は大いにあります。
DXすることで、新しい収益モデルが必要だと気付くきっかけにもなります。
これマネでは、従来の飲食店のBtoCのモデルだけではなく、BtoBなどの新たな事業(コンサルやプロデュースなど)をお伝えするまでがセットになっています。
コロナや震災といった外的なリスクに加えて、人材難など内的なリスクも飲食店は内包しています。そんな中で飲食店は、収益構造を変えていかなければいけません。今、チェーン展開する飲食店では、DX化によって本部をミニマムにして、加盟店や直営店を手厚くサポートしていくスタイルが求められています。コンテンツでありリテールでもある日本の飲食店を経営していることは、本当にすごいことだと思います。BtoCにとどまらず、BtoB事業やグローバル展開など、DXのトレーニングを重ねることで、ビジネスの範囲が広がり、お店もバージョンアップしていくでしょう。
谷口: 外的リスクで言うと、「消費者行動の変化」も含まれると考えています。コロナ禍ではテイクアウトやデリバリーなどの商品がよく購入されるようになったなどの分かりやすい変化がみられましたが、通常時ではジワジワと変化していくもので気づきづらい。
例えば、スマホ検索の75%は地図上で行われています。マップにお店の情報を載せていないのはもったいない。あとは、食べログなどのグルメサイトから予約が入ると、一人につき50~200円の送客手数料を支払うことになりますが、シンガポールは送客手数料のないGoogle予約がすでに50%以上を占めています。Google以外にもInstagramやtwitterといった無料のチャネルを活用する手段もあります。消費者の行動の変化を把握しておくこともDXに非常に重要な要素だと思います。
山澤:テックベンダー側からの質問ですが、そういった環境の変化なども含めて情報感度を上げることについて、飲食店の方はどれくらい情報収集に時間を割いているんでしょうか。
最終的にすごく成長する企業は、情報を吸収して、それをアウトプットしてくことに時間を割いていると思います。このあたりって、飲食店を運営されているお二人からすると、情報感度を高めることについていかがですか?
山川: 学習習慣があまりない、というのが正直あると思います。僕らが出版している飲食店経営などに関する書籍は、外食産業ランキングで1位とったりしますし、ずっと数年間100位以内に入ったりしていますが、ほかの業界に比べると部数は少ないんです。
でもそれは悪いことではないとは思います。
飲食店は毎日がライブをしているようなもの。お客さんを喜ばせたり自分たちを感動させたり。「感動産業」として自分たちがお客様を喜ばせていくということを、現場で毎日少しずつ学んでいくのが飲食店だと思います。
ただ、この変わり目でいうと、インプット力を高めていかないといけないことに気づいてはいるが、その本当のメリットには気づいていない方が多い。飲食店で働いている方たちが、DXを勉強すること、本を読むこと、インプットすることが、どう自分のキャリアに影響をもたらすかを明確にイメージできない。少しずつでも勉強していくことで、5年後10年後は明るくなっていく。それを経営者の方が学び、ぜひ社員のみなさんに伝えていってほしいですね。
TC: 消費者視点で見たとき、DXにメリットはありますか?
谷口: 分かりやすいところでいうと、「ネット予約」なら24時間予約が可能になります。決められた時間に電話予約しか受け付けない場合と比べれば“おもてなし”という意味でも優れていますし、業務を効率化したことで、接客や料理にリソースを使えるようになります。
DXは消費者にダイレクトに還元できる面も大いにあります。ただ、ネット予約といってもグルメサイト経由で予約をすると、お店側に手数料が発生してしまいます。それをお店の公式ホームページにあるネット予約にすれば、手数料分をお店の留保にもできるし、それをお客さんに還元することもでいます。なので、常連客もグルメサイトを利用しているような状態は良くないですね。
山崎: 確かにグルメサイトからしか来ないお客様は多いです。ポイントという直接的なメリットも大きいのでしょう。
山澤: BtoCのサービスを提供するプラットフォームは、そういう仕掛けをできるのが強いですよね。ただ、そのポイントの原資も飲食店が出しているのですが……。
谷口: そういった状況は、これから変わりつつあります。宿泊や航空業界では、自社サイトがベストレートであることを訴求して、ダイレクトに誘導している事例を見かけます。顧客との関係性をどう構築していくか、という点において、とても参考になる事例だと思います。
前半はここまで!
トークセッションは後半へ続きます。
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