飲食店のアップセルで客単価アップするためのポイントと注意点
スキルを身につけゲストのニーズに合ったサービスを
コロナ禍を経た今、外食市場は大きく変化しました。デリバリー市場が拡大しただけでなく、グルメサイトに代わりSNSが集客媒体として大きな役割を果たすようになりました。マーケティング手法や顧客ニーズの多様化によって、さらに競争が激化している飲食業界で生き残っていくためには、新たな収益源を確立し、利益を最大化していく必要性が高まっています。そのための重要な施策の一つが「アップセル」による客単価の向上です。
「アップセル」とは、飲食店でゲストに対し、より多くの注文数、もしくはより高価なメニューを注文してもらうことで、1人当たりの客単価を上げることを指します。アップセルにつながる高付加価値の料理やサービスは、競合店との差別化を図ることができ、さらに顧客満足度向上も期待できます。
ただし、アップセルはゲストの細かなニーズを汲み取ったうえで慎重に行う必要があります。無理に押し付けたり、セールス的にアプローチするのではなく、顧客のニーズに合った提案をすることが重要ですアップセルを通じて売上を伸ばすだけでなく、顧客の体験向上と長期的な信頼関係を築くことでリピーターを獲得する可能性も高まります。
アップセルするためには?ポイントを解説
1.スタッフをトレーニングする
サービススタッフは、接客を通じてゲストとの関係性を深め、好みや嗜好を把握し、アップセルを促す重要な役割を果たします。オーダーをとる際、ドリンクの追加注文やメニューのアップグレードを促すだけでもアップセルの可能性は高まります。料理に合うドリンクの提案だけでなく、料理に使われている食材や味のイメージなど、提供しているメニューに関する豊富な知識が必要です。知識不足では、ゲストからの質問に回答できず、アップセルの機会を失ってしまうでしょう。サービススタッフに自店の料理を試食する機会を与えることも、アップセルをするうえで重要なポイントになります。
サービススタッフが心に留めておくべき重要なポイントを紹介します。
ゲストを悩ませず、セールス的アプローチはしない
ゲストがこちらからの提案を断った場合は、それ以上押し付けることはやめましょう。飲食店では、ゲストの快適さと幸福感が最優先です。無理なアップセルは、食事体験を台無しにしかねません。ゲストにとっては、特別な時間を過ごし、素晴らしいサービスを楽しむための時間です。提案を過度に押し付けることは避け、顧客の満足度向上のためにアップセルをしていると感じてもらうことが大切です。
質問として提案する
アップセルでは、無理に勧めるのではなくゲストの意思を尊重しながら提案をしましょう。
提案を質問形式にすると、2つのメリットが得られます。
ゲストは自分がアップセルを断る権利があることを認識し、無理な圧力を感じたり追い詰められたりしない
質問形式の提案は、顧客の興味を引きやすく、注文ハードルが下がります
例えば、ローストチキンを注文した場合、知識豊富なスタッフがゲストに対して、その料理に合うフルボディの赤ワインやオーク樽で熟成させたシャルドネはお好きですか?、と尋ねるのもいいでしょう。ゲストは無理なく断ることもできますし、スタッフがワインに関する豊富な知識を持ち、提案力があると感じて、おすすめしたワインを注文する可能性もあります。
顧客のプロファイリング
テーブルチェックを利用すると、顧客は予約時に好みや目的の指定ができます。予約フォームで来店の目的(誕生日、デートなど)や、アレルギー情報を記入できます。このデータは、ゲストの体験を向上させ、適切なアップセル提案を行うために活用できます。例えば、誕生日利用の場合、スタッフは誕生日のお祝いに乾杯ドリンクの提案をスムーズに行うことができます。
利益率の高いアイテムをアップセルする
売上を最大化するために重要なのは利益率の高いメニューをアップセルすることです。スタッフに利益率の高いアイテムについてのトレーニングを行い、その魅力を伝えることで、顧客は魅了され、高利益メニューの注文を検討しやすくなります。
2.アップセル効果のあるメニューを考案する
スタッフのサービス力は、アップセルの鍵となりますが、メニューの内容も売上に大きな影響を与えます。ゲストに人気があり、高い利益率のメニューがどれかを把握することが重要です。このような料理は「スターディッシュ」と呼ばれ、他のメニューの販売を促進するために活用できます。スターディッシュのメニューの下に他のメニューオプションをリストアップしておけば、ゲストにメイン料理と他の追加アイテムを組み合わせてより単価の高い注文を勧めることができます。
例えば、ある飲食店でピザが1番人気のメニューアイテムだとします。顧客にはチキン、ベーコン、ハム、ソーセージ、ソフトドリンク、キノコ、チーズなどのトッピングを追加するオプションを提供することで、売上を増やすことができます。ゲストはピザに自分好みのトッピングを追加できるため、料理をより楽しむことができ、その結果売上も向上します。
3.試食を提供する
顧客に新しい体験やアイテムを提供することが大切です。無料でデザートやワインの試食を提供するなど、気軽に試す機会を提供することで興味を引くことができます。通り沿いに立つ飲食店では、通りすがりの人々に向けた試食の提供も効果的です。興味を持った顧客が、来店する可能性が高まります。
4.魅力的なセットメニューの提供
セットメニューを注文することで、通常は単品注文よりもお得になり、同時に注文アイテム数が増えて客単価が上がります。例えば、個別に注文した場合に比べて、セットメニューは料金が割引されていることがあります。このようなお得感は、ゲストがセットメニューを選ぶ動機となり、結果としてレストランの売上増加につながります。
5.顧客データを活用
テーブルチェックのシステムに蓄積された顧客データを活用し、アップセルを促すことも可能です。顧客情報に来店履歴や注文履歴を残しておけば、過去の注文から好みにあったメニューをおすすめできます。たとえば、過去に赤ワインを注文した顧客に対して、最近入荷した珍しいヴィンテージの赤ワインを提案することも可能になります。スタッフはゲスト一人ひとりに合った最適な提案でアップセルができるようになります。
6.EDMを活用してアップセル
EDM(メールマーケティング)は過去に来店したゲストに対して再来店を促すのに効果的です。メルマガ配信でおすすめのメニュー紹介や、次回来店の際に使用できるクーポンをつけることで次回来店への動機にも繋がります。
テーブルチェックのEDM機能では、簡単にメルマガを作成することができます。季節メニューやイベントの告知、誕生日・記念日といった顧客のニーズに合わせた配信をすることが可能です。
これらのポイントを押さえることで、売上の向上、顧客満足度を高めることができます。適切なトレーニング、メニュー戦略やデータ活用などを用いてアップセルを積極的に行っていきましょう。売上の増加だけでなく、ゲストと良好な関係を構築し、長期的な収益構造の改善を目指していきましょう。
【Restaurant upselling: Strategies, tactics, dos and don'ts】を翻訳・編集しました。