コロナ前の3倍、インバウンド外食市場。進まない飲食店側の対策、7割以上が未実施
第2回「飲食店のインバウンド対策に関する意識調査 2023」
世界中のレストランとゲストを繋ぐプラットフォームの開発・提供を行う株式会社TableCheck(本社:東京都中央区、代表取締役社長:谷口 優、以下、テーブルチェック)は、当社の予約データ並びに20~50代の飲食店に勤務する全国の男女1022名を対象にしたアンケートから、飲食店におけるインバウンド対策動向に関する調査を実施し結果をまとめましたので、お知らせいたします。
■ インバウンド外食市場の拡大と飲食店
3年以上も続いた新型コロナウィルスによる世界的なパンデミックも終わり、飲食店には客足が戻っているように見える。ただ、データで詳細に見ていくと、日本の外食市場の様相がコロナ前から大きく変化していることが分かる。本調査では、その中でも今後の飲食業界にとって大きな意味を持つであろう「インバウンド」について、当社の予約データとアンケート調査からレポートをまとめた。まず、当社のデータで訪日客の来店動向を把握した上で、飲食店の対策実施状況や訪日客に対する姿勢をアンケート結果から分析していく。
■ 調査概要
・調査名 :飲食店のインバウンド対策に関する意識調査
・調査対象:飲食店に勤務する20~50代の全国の男女1022名
・調査期間:2023年10月27日~30日
・調査方法:インターネット調査
・p.2~3は国内約7,000店舗の当社予約データを集計
※本リリースに関する内容をご掲載の際は、必ず「テーブルチェック調べ」と明記してください。
■ サマリー
ー 飲食店のインバウンド対策に関する意識調査 データ編ー
日本人客7割で頭打ちも、訪日客はコロナ前の3倍、飲食店の客足。拡大続けるインバウンド外食市場
当社の予約システムに蓄積されている全国約7,000店舗の予約データを分析した。まず、日本人客と訪日客の1店舗当たりの予約人数を比較すると、日本人客は直近2023年10月の予約人数が、2019年同月比で69.8%にとどまっているのに対して、訪日客の予約人数は、2019年同月比で229.4%になっている。さらに、客足がピークを迎える12月の予約人数を比較すると、2022年12月は2019年同月比で279.6%と、3倍に届く勢いで増加していることが分かった。日本政府観光局が発表している2023年10月の訪日外客数は初めてコロナ前を超え、2019年同月比100.8%にとどまっていること*¹と比較すると、特に訪日客による外食需要がコロナ前よりも急激に高まっていることを示しているといえるだろう。
ただ、訪日客の予約人数は、まだ全体の4~5%にとどまっており、訪日客が多く来店する飲食店は、特定のエリアや業態などに限定されていることが推察されるが、一部の訪日客の客単価が非常に高くなる傾向があることから、売上割合ではさらに高い数値になると考えられる。
*1…日本政府観光局「訪日外客数(2023年10月推計値)」
訪日客数上位はアジア圏から。韓国人客はコロナ前の9.5倍、中国人客は10月初のコロナ前超え
次に国別の訪日客予約人数を見てみると、日本での外食に対してニーズが特に強い国が浮き彫りになってくる。コロナ前から変わらず、香港、台湾、米国がトップ3を占めており、日本で外食することに特に関心が高い国といえる。コロナ前後で大きく変化したのは、韓国だ。2023年10月の韓国人の予約人数は、2019年同月比で約9.5倍にまで急増している。訪日客全体においても、韓国からの訪日客数が最多となっており、韓国人客の飲食店予約が急増している理由は明白だ。2023年10月時点の予約人数は、韓国人客は4位にとどまっており、さらに飲食店へ誘致できる余地があると考えられる。
一方、中国人客の予約人数は2023年8月に団体旅行解禁後も、コロナ前の約半数程度で推移しており、回復が著しく遅れている。今年10月、 3年8か月ぶりにようやくコロナ前の水準を超え同117.6%となった。中国増の増便が遅れていることや、原子力発電所の処理水問題の影響などで、中国の訪日客数自体はいまだ同64.9%減となっている。
日本人の飲食店への客足が、コロナ前の7割前後で推移しこれ以上の回復を期待できないのに対して、訪日客の増加率はコロナ前の3倍にまで高まっており、今後の中国人客の客足回復を考慮すると、今後もインバウンド外食市場はさらに拡大を続けていくことが予想される。
ー 飲食店のインバウンド対策に関する意識調査 アンケート編 ー
「ほぼ毎日」訪日客来店する飲食店、コロナ前から2倍に。東京、京都が来店頻度トップ2。大阪は最下位
ここからは、飲食店勤務者に対するアンケート調査結果をまとめ解説していく。まず、訪日客の来店頻度を尋ねたところ、「ほぼ毎日」訪日客が来店すると回答した人の割合は、33.4%となり、コロナ前の15.9%から約2倍の割合にまで増加していることが分かった。「ほぼ毎日」「週2~3回」「週1回」と回答した訪日客の来店が高頻度といえる店の割合は、コロナ前から38.6%から54.1% となり、15.5ポイント増加している。「まったく来店しない」と回答した人の割合は約1割のみで、ほとんどの飲食店で日常的に訪日客が来店していることが分かる。
主要な8都道府県別で見ると、「ほぼ毎日」と回答した人の割合が最も高かったのは、44.4%で京都府だった。「ほぼ毎日」から「週1回」までの高頻度層の割合が高かったのは、東京、京都、神奈川の順で上位3位を占めた。
高頻度層が最も少なかったのは、大阪だった。人気のテーマパークがあったり、2025年には大阪万博を控えていたりなど、訪日客からの関心も高く、訪日客訪問率では東京に次いで第2位である*²が、飲食店を訪れる割合は低いようだ。京都などの周辺エリアに流出している可能性が高いと考えられる。日本で外食を楽しみたい、という訪日客に対して大阪独自の外食文化を効果的に情報発信することで、さらに訪日客を取り込んでいける余地が大いに残されているといえる。訪日客が来店するまでの大きなハードルとなっているのが「予約」であり、電話のみの予約受付ではなく、多言語対応のネット予約を導入するだけでも、訪日客の流入を大きく伸ばせる可能性が高い。近年、飲食店のネット予約市場は拡大しているが、いまだに半数が電話予約であり*³、予約動線の整備や多言語対応など、改善していく必要があるといえるだろう。
*2…日本政府観光局「日本の観光統計データ 都道府県別訪問別ランキング」 *3…当社予約データ集計
訪日客集客に消極的、2割の飲食店が「これ以上増えてほしくない」。最大の課題は「言語の壁」、マナーを問題視する声も
コロナ収束後、日常的に訪日客も飲食店を訪れるようになったが、飲食店側の受け入れ態勢が整っていない現状が見えてきた。「訪日客の来店がさらに増えてほしいか」という設問に対して、「増えてほしい」と回答したのは、36.7%となり、コロナ前の調査からわずか3.1ポイント上昇するにとどまった。一方、「増えてほしくない」と回答した人は、いまだに22.6%存在する。コロナ前調査から9.6ポイント減少したものの、インバウンド外食市場が急激に拡大を続けている状況と、飲食店側の姿勢が乖離しているといえる。主要な都道府県別にみると、訪日客に対して最も消極的なのは、北海道だった。すでに国内客で賑わう観光地であることやオーバーツーリズム問題などが背景にあると考えられる。訪日客の受け入れ姿勢が最も積極的だった東京でさえ、訪日客の来店が「もっと増えてほしい」と回答した層は、過半数を下回る45.5%だった。
訪日客の来店が「増えてほしくない」理由を尋ねたところ、トップに挙げられたのが「外国語対応が難しい」だった。次いで、「マナーが悪い」「メニュー対応が難しい」と続き、いずれも言語が絡むコミュニケーション関連の理由が上位を占めた。一方、訪日客が「もっと来てほしい」と回答した層に、その理由を尋ねたところ、「売上につながるから」という理由が最多で、3位には「客単価が高い」という理由もランクインした。訪日客と日本人客の客単価比較では、訪日客の方が単価が「高い」と回答したのは34.6%で、「低い」と回答した13.0%を大幅に上回った。すでに訪日客の来店が、飲食店の利益をさらに拡大する重要な一要素となっていることが分かる。
進まない飲食店のインバウンド対策、 7割以上の飲食店が未実施。効果のあった対策は「言語対応」「カード決済」に次いで「Wi-Fi導入」も
飲食店のインバウンド対策の実施状況について尋ねたところ、拡大を続けるインバウンド外食市場に対して、飲食店側の対策があまり進んでいない現状が明らかになった。インバウンド対策を実施していて、「すでに効果を感じている」と回答したのは、コロナ前の調査からわずか5ポイント上昇したにとどまり、21.0%となった。一方、「何もしていない」「対策をやめた」と回答したのは、55.6%となり実施予定すらない飲食店が半数以上存在することが分かった。さらに、これらの回答に加え、「準備中」「検討中」「検討予定」を加えると、現状インバウンド対策を実施していない飲食店の割合は、72.8%にまでのぼる。多くの飲食店が言語の壁などに課題を感じていながらも、対策がほとんど進んでいないのが現状といえる。
訪日客を迎える上で感じている課題で、最も多かったのは言語対応関連だった。「接客」「電話対応」「問い合わせ対応」「ネット予約の多言語対応」、と上位4つが言語に関する課題だった。5位に入った「キャンセル対策」も、訪日客を迎える上で切実な問題だろう。日本人客に比べて、訪日客のキャンセル率は10ポイント以上高いというデータもあり*⁴、予約時のカード情報入力などのキャンセル対策は必須だろう。全体的にコロナ前の調査から全項目で数値が低下しており、徐々にではあるが課題が解決むかって動いている状況が見える。
さらに、インバウンド対策を実施している飲食店に効果があった対策方法を尋ねた。最も効果があったのは、「外国語メニューを用意」することだった。課題のトップだった「外国語での接客」に呼応した結果だといえる。2位にはキャッシュレス決済対応が入った。訪日客からのニーズは特に高いことがうかがえる。「Wi-Fi導入」が3位に入っているのは、ゲストのスマートフォンの通信環境をよくすることで、言語にも会計にもスムーズに対応できるようになることから上位にランクインしたと考えられる。
*4…当社データ集計
インバウンド集客2大ツール「Instagram」と「Googleマップ」 飲食店予約機能の充実、圧倒的な情報量
最後に、訪日客の集客で最も効果のあったツールを尋ねた。1位「Instagram」2位「Googleマップ」となり、コロナ下で進んだ両社の飲食店検索・予約機能強化が影響した。いずれもほぼ全世界に膨大なユーザーを擁しており、レビューなどの投稿件数、店舗情報などの情報量が他サービスを圧倒している。特に英語圏のユーザーに対する情報発信、予約獲得は有効な2大ツールとして飲食店の間に定着している。
ーまとめー
対策進まない背景に、人手不足など根本的な課題
成長市場に乗り遅れないために、IT活用で早急な対応を
今回の調査で見えてきたことは大きく2つある。1つは、インバウンド外食市場がすでにコロナ前を上回り、急激に成長しはじめていること。そして、もう1つは、それに対して飲食店の対応がまったく追い付いてない、ということだ。冒頭で示した予約データからも分かる通り、日本人の客足はコロナ前を上回ることなく、コロナ5類移行後も7割前後で推移を続けている。一方、訪日客の予約人数は、ピーク時ではコロナ前の3倍にまで増えており、日本で外食することへの需要が急速に高まっていることは明らかだ。
訪日客の盛り上がりに比べて、飲食店側の姿勢は消極的だ。2割の飲食店が「これ以上訪日客にきてほしくない」と考え、7割以上の飲食店がインバウンド対策に関して「何もしていない」。その背景には、オーバーツーリズムや人手不足などの、根本的な業界課題が横たわっている。ただ、人手不足への対応とインバウンド対策は、いずれもIT活用が有効な手段の一つとなる。今後、日本人だけの胃袋では外食市場は縮小する一方であることは安易に予測できる。日本の食に対して強い関心を持っている訪日客を今のうちからしっかり取り込んでおくことは、今後ますます重要性を増していくだろう。コミュニケーションや会計などの課題は、いま様々なITツールによって簡単に解決できるような環境が整っている。インバウンド対策をまだ実施していない飲食店は、ぜひ後回しにせず積極的に取り組んでほしい。
【本件に関する報道関係者からのお問合せ先】
株式会社TableCheck PR担当:望月 MAIL:tc-pr@tablecheck.com