TableCheck Author
2022年12月10日 · 読了時間:4 分
任:食べログは、ユーザー側からすると自分が書いた口コミがそのまま反映されると思われていますが、実はそうではないんですね。影響力のあるインフルエンサーの評価が比重重く反映される仕組みになっています。
鷲尾:一応、食べログ側も点数の付け方については、レビュアーごとに影響度が違うことは明記されています。しかしその選定基準については、触れられていませんね。
新井:それも仕方がないことと言えると僕は思います。食べログには食べログなりのアルゴリズムがあるべきだと思いますし、逆にそこがフルオープンで全員のレビューを平等に扱うとなると、そのシステムを悪用する人も一定数いるので、食べログ側がうまくコントロールして、ユーザーの利便性を高める権利もあって然るべきですよね。
坂井:飲食店に対して圧倒的な影響力を持つグルメサイト側は、営利事業だから、何をしてもいいんだとは、絶対ならないと思うんです。当たり前だけれど、法律を守った方がよろしいだろうし、何らかのソーシャルコードを守った方がいい。あんまり道徳的な話をしたいわけではないんだけれど、アルゴリズムを作る側の人間も、一定のモラルを持つべきだと思います。
谷口:同時にインフルエンサー側のモラルも問われます。よく飲食店で話を聞くと、インフルエンサーの中には、「タダにしてくれ」と高圧的な態度を取る人もいるようです。そこでお店側が首を縦に振らないと「点数がどうなってもいいんですか」とおどしのようなことを言ってくるとか……。要は悪質なインフルエンサーは、ただでサービスしてくれるところには高い点数をつけるし、そうじゃないところは美味しかったとしても、低くつける。そういうモラルのないインフルエンサーは、コントロールしないといけない。
鷲尾:さきほど「Googleマップとグルメサイトは共存共栄の関係」という言葉が出ました。実際に僕も取材してる中では、最近ではGoogleマップでお店を発見して、食べログで確かめるというセカンドオピニオン的な使い方をしている人も増えてきたように思えます。
おそらくコロナ禍で外食の機会が減ったことで、飲食店を予約する際にも1回あたりの調べる時間が増えている、これが背景にあるのだと考えられます。
新井:おっしゃるとおりです。最近若い世代の間では、最初食べログで情報を得て、その口コミや評価が「本当なのかな?」とGoogleで検索し、今度はInstagramでも確認する。ユーザー側のリテラシーも向上している状況は、実際に行動としても現れてきていると思います。
鷲尾:では飲食店の誘客を支えるプラットフォーマーは、今後どうあるべきなのでしょうか。
新井:現在、飲食店検索のプラットフォーマは多様化していますが、実際のところ今まだ最適解がない状況だと思います。
これは何を言ってるかというと、食べログは食べログでいいところがやっぱりありますし、GoogleマップとGoogleマップでいいところがあるんですよね。もちろん食べログにもダメなところもあれば、Googleマップにもダメなところがあります。例えばGoogleマップでいくと「5年前の5点」と「1日前の5点」が同じように扱われていることもありますし、点数や口コミの賞味期限の関連性については改善されていません。また、世代ごとに最適化したり、自分と同じような属性の人の口コミをもとに検索することは、いまだできていないようですね。
なので、個人的には属性に特化した形のプラットフォームや賞味期限がついてるグルメサイトなど、新しいサービスが出てくれば、それだけ消費者の選択肢が増える。このことはきわめてポジティブだと思ってますので、そんな感じの世の中になるといいなと、私自身は思っております。
任:私はグルメサイトには、便利でフェアでユーザーに正しい情報を伝えること、お客さんと店を繋げるという本来の姿であってほしい。それが一番の願いですね。
今回の食べログ訴訟では、食べログ側が自社の売上や利益のために、チェーン店を犠牲にしてきたことが明らかになりました。
コロナ禍でチェーン店は深刻な打撃を受けましたが、僕は食べログによる不当な点数の操作も影響してると思っているんですよね。
2019年の5月にチェーン店ディスカウントが始まって、3年間続いた。これによって韓流村で売り上げが20%ぐらい下がったんですよ。飲食店って10%売り上げが下がると、固定費の割合も高いので、すぐに赤字に転落してしまう。20%売り上げが下がると、もうなにも立ち打ちできない状況に陥るんですよ。
さきほど、プラットフォーム側の「適正な利益」という話も出ましたけど、今カカクコム社はすごく頑張られていて、今期で250億という営業利益を叩き出した。売り上げ650億円で250億、営業利益率で4割なんですよ。
しかし、これが飲食店だとどうでしょう。仮に200億円の利益を出そうとすると、1兆円売り上げ上げなくちゃいけないんですよ。 1兆円ですよ(笑)。
そんな中、IT企業が圧倒的な支配力のもとその地位を利用して、飲食店に損害を与えることは絶対にあってはならない事態です。
Googleについても、改善しなくてはいいけないステマ対策やフェアネスやリスポンスなど課題は山積していると思います。繰り返しになりますが、一定の企業が独占的な地位を濫用することはあってはならない。
坂井:まさしく。我々は物理的な社会において、悪口やヘイトスピーチを叫びながら歩いてはいけないわけですね。もはやそれと同程度の社会規範をインターネット上には求めていいのではないのかと思います。
別にそれは「表現の需要を規制せよ」という話ではありません。
むしろ商売は、経営者や従業員の表現活動でもあるわけですよね。その自由を尊重する方向に変わっていかないといけないし、今でもその過渡期にあるんだろうな、という風な気がします。
谷口:今の坂井先生のお話でまず思いついたのが、インターネットが登場する前って、町とか村とか、小さいコミュニティの単位でマナーの悪い人がいたら、すぐ噂になるわけですよ。「何々さん、また酔っぱらってたよ」とか色々と言われたわけじゃないですか。個人の信用が可視化されてたんですよね。
それがインターネットの時代では、匿名なら何をやってもいいという状態になってる。
なので今一度、お店がお客さんを評価するとか、そういう世界観があってもいいのかなと僕は思っています。お店から全く評価されてない人の口コミって、信用度も低いですから。
そして客観性や公平性について考えると、弊社の場合、予約管理システムを提供してるので本当に人気があるお店かどうかが、データで可視化されるんです。
よくグルメサイトでも「接待に向いてます」「デートに向いてます」とか謳われている店舗も見かけますが、はたして実際に利用した人の満足度が高いのかどうかわからない。そういったこともキャンセルやリピート率などから、把握できるようになります。
ただ、それでも僕は全然十分じゃないと思っていて。口コミがどんどん増えていくとただ平均に回帰していくだけ。「世の中全般はこういう評価ですよ」と平均だけを言われても、それが自分の好みとはかけ離れていたり、そもそもその口コミを書いてる人がどういう人なのかよくわからないわけですよね。
でも趣味嗜好が合う人って、例えば音楽の話してても映画の話してても「あ、あれも見たよ」とか「あれもよかったね」と盛り上がりますよね。
これは飲食の場合でも一緒だと思うんです。
僕は、シンガポールで生まれ育ったので、シンガポール料理がどんなものかはある程度わかってるつもりです。でも例えば食べログを見ていると、日本にローカライズされた”似非シンガポール料理屋”さんの評価が異様に高くて、ガチなシンガポール料理屋さんは評価が低かったりするんですよ。でもはっきり言って、そんな平均の点数なんて、僕には全く関係がないことです。
なので理論上ですけど、全てのレストランがテーブルチェックを使ってくれれば、 全てのユーザーの行動パターンがデータで可視化される。その意味では、我々テーブルチェックはターゲットセグメントを絞ってるので、その世界を実現しやすいところなのかなと思ってます。
鷲尾:どうもありがとうございました。口コミやグルメサイトなどの誘客システムが多様化する中では、店舗側から自分がある程度、正しい情報をアクティブに出さないと、プラットフォーマーのいいなりになってしまう現状があります。
飲食店検索プラットフォーマーのメインプレーヤーは、これから移り行くかもしれませんが、店舗側は、ネット上の”看板”をきれいにしつつ、顧客台帳を整えて、お客様が一度来店してくれたら、直接ご連絡をして再来店を促せる世界にしていかないと、飲食店的にはサスティナブルじゃない。
谷口:テーブルチェックとしても、お店と消費者がダイレクトにメリットを享受できるような関係性を目指して、今後も事業を展開していきたいと考えています。
以上で、「グルメサイト後の飲食店検索プラットフォームラウンドテーブル」のトークセッションは終了です。
最後までご覧いただきありがとうございました!
TableCheck Author
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