飲食店の経営において、メニューの価格設定は極めて重要な要素です。昨今、飲食業界では値上げの話題が数多く取り上げられています。天候不順による野菜の価格高騰や人手不足による人件費の高騰など、コスト高の波が続いています。そのため、多くの飲食店がメニュー価格の見直しを検討しています。価格の見直しは収益を増やす方法の一つですが、価格変更はブランドや食事体験にどのように影響するかを戦略的に検討する必要があります。この記事では、飲食店の収益を向上させるための6つの価格戦略を紹介していきます。
1.カテゴリーとターゲット層の理解
飲食店には様々な業態が存在します。例えば、ファインダイニング、カジュアルダイニング、ファーストフード、カフェなどです。メニューの価格は、店のコンセプトやターゲット層に合わせる必要があります。
高価格帯のファインダイニングでは内装デザイン、高品質な食材、質の高いサービスに投資し、それに見合った価格設定が行われています。記念日やデート利用を意識したレストランであれば、ある程度高めの価格でも、サービスも含め満足していただけるでしょう。一方、ファーストフード店は手頃な価格設定を採用し、利便性を提供しています。メニュー価格は、カテゴリーやターゲットに合わせることが不可欠です。
2.FLコストとレシピ原価の管理
FLコストとは、「food and labor cost」の略称であり、原材料費=Foodと人件費=Laborの合計を表したものです。
価格戦略を考えるうえで、このFLコストとレシピ原価の2つのコスト管理が不可欠となります。
レシピ原価はメニューごとに原価計算をします。
一つの料理に使用するすべての材料をリストアップ
使用された量によって、一皿あたりの材料費を計算
材料費だけではなく、人件費も考慮
メニューごとに原価を正確に把握することでコスト管理がしやすくなり、適切な価格設定が可能になり、収益の最大化につながります。
FLコストは一般的には売上に対して50~60%以内に収めるのが望ましいと言われています。
コスト削減の方法は以下の4つがあります。
1:定期的にFLコストを管理し、無駄な支出を特定する
日常的に負担するすべての費用を確認し、無駄な支出、レストランのブランディングや日々のオペレーションに長期的な影響を与えない経費を洗い出します。
2:メニューを見直し、売上を最大化する
料理の品質や顧客の満足度を損なわずに売上を最大化するために、メニューを見直す必要があります。売上が落ち込む時期には、使用する食材や提供ボリュームを調節するなども方法の一つです。オーバーポーションにならないことも注意すべきポイントです。
3:原材料費を設定する
料理ごとに適切な原材料費を設定することです。これにより、メニューアイテムごとにコストを正確に把握でき、価格設定に役立ちます。
4:明確な目標を設定し、コスト削減を計画的に行う
目標の設定は計画的なコスト削減のポイントです。また、目標を達成するための具体的なアクションプランを策定し、スタッフに共有し、協力を促すことも重要です。
3. ユニークな料理と季節限定メニューの活用
入手が難しい食材や、希少価値の高い食材を使用したメニューは、それに見合った高価格帯で提供することができます。お客様は普段食べることのできない珍しい料理に対しては、高い価格を支払うことに抵抗はないでしょう。メニューに独自性の高い料理を取り入れることは、大きな利益率を達成するのに役立つかもしれません。
もう一つの戦略として、季節限定メニューを提供することも有効です。旬の食材は流通量が多く、比較的安価で手に入れられる上に、品質・味ともに高い傾向にあります。また、季節を感じる料理を提供することで、顧客を飽きさせず再来店の可能性も高まるでしょう。例えば、春先に旬のいちごを使用したデザートを打ち出したキャンペーンを行えば、高い集客も期待できます。
4. プロモーションとキャンペーンの実施
利益率を維持するためにメニューの値上げや、ポーションを減らすか、より安価な食材を使用せざるを得ないことがよくあります。しかし、値上げやコスト削減をカバーするような割引やお得なサービスを提供することで、お客様に満足いただけるような対策もあります。
ハッピーアワー:一定の価格でより多くのフードとドリンクを注文する機会を提供
イベントの開催:テーマ性のあるイベントを開催して普段のメニューや店内の雰囲気を特別なものにする
セットメニューの販売:お客様は単品よりお得に購入ができ、お店は販売数が上がり客単価も上がる
特典を付ける:高額注文をしてくださったお客様に対して、サービスのデザートを提供など
5. 競合他社の調査
特にファーストフードやカジュアルダイニングの場合、競合他社の調査が重要です。このような業態は、ターゲットとしている客層はコストパフォーマンスを重視しているお客様が多いのが特徴的です。そのため、再来店を促すためには競合他社よりも低価格でより充実したメニューを提供する必要があります。
値段を抑えるだけではなく、セットメニューや特典をつけることで他店との差別化を図ることもできます。
6.ファインダイニング
高単価なファインダイニングは、ランチとディナーで異なる価格設定を採用しつつも、一貫性のあるメニューを提供するケースが多いです。ファインダイニングは、高いコストを投資し、非日常的な質の高い料理やサービスを提供しています。食材の品質や調理方法にこだわり、お客様に最高の食事体験を提供すると同時に、コストコントロールのために、決められたレシピやセットメニューを提供しています。これにより効果的にコスト管理を実現できています。
IT技術の利用
価格戦略は収益を最大化する手段の一つですが、新しいテクノロジーやシステムを積極的に取り入れていくことも重要です。例えば QRコードメニューや、フードデリバリーアプリの導入、認知や集客力アップのためにSNSの活用も効果的です。
さらに、予約顧客管理システムの利用により、ネット予約の管理や、顧客データを活用して、顧客満足度の向上を図り、再来店を促すことができます。接客面でだけでなく、顧客データはリピーター獲得のためなど、さまざまな方法で活用できます。また、予約システムに蓄積された顧客データから、顧客の食事の傾向を把握し、席在庫や食材発注を予約状況に合わせて調整することで、フードロスを減らすことができます。
この記事は【6 restaurant pricing strategies to maximize profits】を翻訳・編集しました。